人間の記憶って、いつもなんだかふとしたことで蘇ってくる。
それはもう、昔からそう。
ふと吹いた風の温度、強さ、そのタイミング。
夕暮れ時に通り過ぎていく車のエンジン音、夕焼けの色。
ほんの少しの匂いだけで、忘れていた何かを鮮明に思い出す感覚とか。
人間は忘れていく生き物。
だけど、忘れていたはずの何かをふとしたことで思い出すこの感覚は、決して忘れていた訳ではなくて記憶の引き出しの奥にしっかりと丁寧に仕舞われていた感覚なのかなぁなんて思ったりするのです。
そしてそれが自分にとって良い記憶なのなら、そこには懐かしさやほんの少しの切なさが付帯されて、曖昧だった記憶はさらに良いものになる気がするのだけれど。
その記憶が自分にとって辛いものだった時には、忘れたいのに忘れられないものになっていくんですよね。
数年前、うちの息子が少し辛い思いをしていたことがありました。
親になってわかったことですが、息子が受けるダメージはその何倍にもなってこちらにやってくるんですよね。
当事者が自分だったら楽だったのに…なんてことを思ったくらい、それはもう何倍にもなって。
その頃によく通った道路。場所。
もう行かなくても良くなっていたのに、娘が進学したことでまた行かなければならない場所になりました。
別に何がどうとかないし平気な顔をして普通に過ごしてるけど、心の奥は少しざわついているような気もする。
だけど、こういう毎日を過ごしていくことでもしかしたら今までの記憶を上書きすることができるようになるのかなぁとも思えるようになってきた今日この頃。
時間の力は偉大ですね。